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新築マンションの広告制作をしている筆者が、在留/在日外国人に向けて「住まい」「暮らし」を伝えるメディア。海外にルーツを持つ友人たちが、どんな部屋に住み、どんな生活をしているのか取材し、その中で許諾がとれた友人の部屋の写真とインタビューテキストを掲載します。その人のパーソナリティではなく「住まい」と「暮らし」にフォーカスした記事づくりを目指します。

プロジェクト企画・製作者: 原尭

2021.07.12

TOKYO STYLE

はじめに
はじめまして。本メディアを担当している原です。「海外にルーツを持つ友人たちが、どんな部屋に住み、どんな生活をしているのか」を伝えるために企画した本メディアですが、最初の投稿では、そもそもなぜこのようなメディアを作ろうと思ったのか、についてテキストにしておきたいと思います。取材やメディア制作を進めていくうちに、「そもそもなんでこれやろうと思ってたんだっけ」となる瞬間も出てくると想定されるので、そんな時に初心に立ち返れる内容になることを願ってテキストを進めてみます。


筆者の素性について①
私は、あるメディア企業で広告制作の仕事をしています。扱うプロダクトは新築分譲マンションです。東京都内を中心に首都圏の物件を広く担当しており、仕事がらマンション購入を検討している方や実際に購入された方など、年間100人以上の方にインタビューをしています。そのインタビューした内容を元にして、主に新築分譲マンションの広告を制作します。


筆者の素性について②(新築分譲マンションの広告とは?)
新築分譲マンションの広告というと、鳥瞰写真の物件が建つ場所に光の柱があるとか、大きい級数の文字でポエムのようなキャッチコピーがあったりとか、、そういうイメージが一般的かもしれません。認知を広げるという目的では必要な広告ですが、移住を具体的に検討している方には「その土地に住んでいる人がどういう生活をしているのか」という情報も必要です。

「住んでいる場所を変える」ということは、実はかなり不安な行為です。風邪をひいたらどこの病院に行けばいいのか、仕事で夜が遅くなった時に空いてるスーパーはあるのか、地元のコミュニティにうまくなじめるのか、など、挙げたらキリがないほど。

そんな時に必要なのが「住民の等身大の声」です。いいところばかり伝えるのでもなく。悪いところばかり批評するのでもなく。住んでいる人の主観でこの街のどんなところが好きなのか、不満があるところはどうやって解消してるのか。そんな事実の積み重ねが移住する不安を好奇心に変えるサポートになると信じて、私はマンションの広告を作っています。


「在留/在日外国人」の暮らしを取り上げることについて
本メディアはかなりニッチなテーマ設定になっていますが、紆余曲折あり今のテーマに一旦着地しました。もともとは、上記広告制作の仕事をする中で、マンション購入を検討する方に海外ルーツの方が増えてきたことが、このテーマに興味を持ったきっかけでした。東京都が調査している各行政区の外国籍住民割合のデータを見ると、今は多いところでも10%前後です。が、この割合が増え、いつかプロモーションをする対象が日本人だけでなくなる。在留/在日外国人も対象になる。そんな未来を想像し、先んじて海外ルーツの方々が「住まい」や「暮らし」に関してどんな困りごとがあるのか、を調べていこうと考えました。

住まい探しでどんなことに困っているのか実際にヒアリングしてみると、事前に想像していた「言語の壁(専門用語がわからないなど)」「慣習の壁(暗黙の了解とされていることが理解できないなど)」などで困っている人はほとんどいませんでした(正確に言うと、自分で乗り越えている)。逆に、困っているというよりも、今の住まいに居心地の良さを感じて暮らしている人がほとんどでした。

よく考えたら当たり前のことであり、そもそも苦労しているだろうという色眼鏡で見ていた自分の浅薄な偏見を反省するのと同時に、この生活を伝えているメディアが無いということも感じました。国内のメディアが海外ルーツの方の住まいと暮らしについて伝えていることは

・物件を貸し出す側(主に日本人)へのリスクやトラブル事例などの紹介
・物件を借りる側への賃貸チュートリアル
・物件を借りる側のパーソナリティについて
 └日本に来た動機
 └どうやって日本語を覚えたのか など
くらいで、驚くことに、家を借りた後どんな暮らしをしているのかを伝える情報はみあたりませんでした。唯一あるとしたら、一部の大使館勤務者や外資系企業の日本駐在役員のラグジュアリーな生活を紹介するものくらいでした。

上記の構造は、「東京の暮らし」を紹介する時の構造に似ていないでしょうか。実際に私自身の原体験として、大学進学に際して東京で一人暮らしをする時に、雑誌に載っている本当に存在するのかわからない「イケてる大学生の部屋」をお手本にしては、好きでもないラバーライトを買ったり、育てる気もない観葉植物を買ったりして、一時的な安心感とともに言葉にできない窮屈さを感じていました。

そんな自分に「居心地のよさは人それぞれ」という当たり前の価値観を与えてくれたのが、本ポストのタイトルにもしている、都築響一さんの「TOKYO STYLE」という写真集でした。内容は「人に見せるための部屋」ではなく「生活するための部屋」を普段のまま写し、家主の生活を切り抜いた写真集です。小さい部屋にごちゃごちゃとモノが置かれていたり、冷蔵庫以外モノが全くなかったり、いわゆるきれいな部屋は出てこないのですが、同じ空間はひとつもなく、一人一人が好き勝手に気持ち良く暮らしている様子が感じられ、この写真集が自分の暮らしを自由にしてくれたアイテムの一つでした。

今の在留/在日外国人の方、またはこれから日本に来ようとしている方は、一人暮らし始めたての自分と同じくらい、暮らしや住まいに対して情報不足なのではないか。そう考え、今回制作するメディアでは、等身大の生々しい生活現場を、誇張せずありのままに伝えたいと思っています。本業で培った経験も一部活かせそう、という「わざわざ自分がやる意味」も作りつつ、最終的に読んでくれた人が「日本での暮らし、東京での暮らしってこんなもんか。でも面白そうじゃん。自分にもできそう。」と感じてくれたら幸いです。


「海外にルーツを持つ友人」という表現について
冒頭に引用した東京都の調査でもわかるように、既に東京にはたくさんの外国籍住民がいます。誤解を恐れず言えば、取材対象の宝庫です。ただ、今回取材するのは「友達」に限定します。それは、発信したい内容がきわめてプライベートな内容なため信頼関係のある相手を取材対象にしたい、ということではなく(それもありますが)、「メディアへのアウトプットを目的とした取材対象探し」をしたくないからです。

住まいや暮らしに限定しなければ、海外にルーツを持つ方を取材対象とした記事やドキュメンタリーは多々あります。個人的には、取材対象者が発信したい内容をメディア制作者が代弁する構造になっている、つまり共犯関係が作れている作品もあれば、制作者が功名心にかられて取材対象者を素材としてとらえているものも少なくないと感じます。今回私がテーマにしたい「住まい」と「暮らし」は、取材対象者に主張があるものではないため、どこまでいっても取材する人とされる人という関係になってしまう懸念が強いです。なので、自分自身のメディアを魅力的にするために取材対象を探す、ということはせず、友達になる→どんな生活をしているのか気になる→取材する、という順番を厳守したいと思います。


さいごに
と、半ば言い訳ともとらえられることを書いてしまいましたが、取材の起点となる「友達になる」がうまくいっていません。少し利害関係のあるコミュニケーションも含めて、出会いの総量を増やしてみようとボランティア参加などしてみているものの、世情もあり関係性を深めることに及び腰になっていることも事実です。平行して、そもそも、作ろうとしているメディアって本当に誰かに求められているものなの?という自問自答も発生しています。が、やってみないと始まらないところもあると思うので、まずは友達作りを頑張ります。次の投稿では取材ができていることを願いつつ、最初の投稿とさせていただきます。

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企画・製作者

原尭

1985年生まれ、埼玉県出身。不動産メディアで新築マンションの広告制作を担当。初めての街で暮らすことをよりポジティブに捉えられるようなコンテンツづくりを目指しています。