logo.jpg

ABOUT

MAIL

ARTICLE

いったりきたり

異なる背景を持つ他者と出会っていくなかで、どんなことに戸惑い、躊躇し、気づきをもらいながら、関係性を積み重ねていくのだろう。とあるお店の女性店主と出会い、私の家とお店を、いったりきたりしながら考えたことを綴っていきます。

プロジェクト企画・製作者: 上地里佳

2021.07.12

#00

背景が異なる他者と、どのように出会うことができるだろうか。
この個人プロジェクトでは、文化背景が異なる他者とどう出会い、どのように関係性を積み重ねていけるのか、試行錯誤のプロセスを綴っていきます。それは今すぐに何かを解決するものではないかもしれないけれど、個人的な迷いや戸惑いを含めて書くことをとおして、これから他者と関わっていくときのヒントとしていければと思っています。

---

最近、日々の暮らしのなかで、異なる文化や言語を持つ人と場をともにする機会が増えてきたことを感じる。もちろん以前からそういった場面はあったが、より実感する機会が多くなったように思うし、「多様性」や「多文化社会」ということばをよく耳にするようになった。一言のことばで言えてしまうけれども、私と多様な背景を持つ彼・彼女らと接点を持つ機会はあまりないように思う。多様性を尊重していきたい気持ちはあるるものの、私の日常生活と「多様性」や「多文化社会」は少し距離がある、そんなギャップをどうにか縮められないだろうか。

だからこそ、「スタディ3 Cross Way Tokyo」をとおして、個人として、どのように背景が異なる他者と出会い、どのように関係性をつくっていけるのかを考えていきたいと思っていた。
でも「さあ、いざ行動してみよう」と思うと、何から始めたらいいものか……。
そんなときに私の背中を押したのは、スタディ3のゲスト講師とのことばのなかでも印象的だった「出会うためには、まずはまちを歩いてみること」という態度だった。
この活動をしていた2020年度、私は東京都足立区に住んでいた。足立区は、東京都内では3番目に外国籍の方が多い区だ(※2018年時点での統計。ちなみに1番多いのは新宿、2番目は江戸川区)。なかでも竹ノ塚はフィリピンをルーツに持つ方が多く住まうまちなのだそう。私は足立区に住んで3年ほどだったが、竹ノ塚は乗り換えで1, 2回利用したくらいで、ちゃんと歩いたことがなかった。だからこそ、そこにどんな暮らしや風景があるのか、一度行ってみたいという気持ちがあり、この機会に行ってみることにした。

2020年11月8日、初めて竹ノ塚のまちへ。
行きのバスで、竹ノ塚について調べてみると、わりと大きめな公園とその近くのフィリピン料理屋さんの情報が目に留まる。なんとなく、という理由ではあるが、まずはそこにいってみることに。
公園では、おじさんたちがベンチを使っていたるところで将棋の対局をしていたり、胡弓の合奏練習をしていたり、子連れの家族が芝生でご飯を食べていたり、愛犬と散歩する人がいたり。この日は日曜日で、天気がよかったこともあいまって、たくさんの人がそれぞれ好きなように公園で過ごしている風景が気持ちよかった。初めて訪れるまちは面白い。
公園を通り抜けた先に、フィリピン国旗が描かれた看板の料理屋さんがある。入り口にある看板の角が一部欠けている店構えに、やや緊張感が高まる。

これが、私とお店を営む女性店主との出会いのはじまり。

PAGE 1

企画・製作者

上地里佳

本スタディのスタディマネージャー。2021年からは沖縄を拠点に、文化芸術活動に携わる。